い草の鍋敷き

土鍋を使うことが多くなるこれからの季節に、なくてはならいのがこの鍋敷きです。
しっかりと厚みのあるドーナツ型の鍋敷きはい草(いぐさ)で編まれたものです。

創業1886年の須浪亨商店(すなみとおるしょうてん)は、もともと岡山県倉敷市で「ござ」を製造していました。
ござの原料になるい草は湿地や浅い水の中に生える植物で、泥の中に根を張ります。その姿は、先の尖った細い茎ばかりが束になったような形状をしています。このい草の茎を使ってござが作られています。
花ござ発祥の地である倉敷では、い草の農業やい草製品の産業が盛んでしたが、産地の衰退と共に須浪亨商店ではござは作らなくなり、現在はい草を用いて鍋敷きやかごを編んでいます。
いぐさの特性を踏まえながら、使いやすさを追求した魅力的なものづくりが継承されています。

土鍋など、底に釉薬をかけていないザラッとした鍋肌が持ち味の調理道具は、時にテーブルを傷つけてしまうことがあります。
この鍋敷きは、底が丸い鍋でも安定して置くことができるので、熱の伝道を抑えるだけでなく、傷防止の役割も果たしてくれます。

い草でできているので、焦げつくこともありますが、こうした経年変化によって、さらに味わいが深まり、愛着が湧いてくるポイントです。
い草独特のほんのり艶も美しい逸品で、使わない時は台所にかけておくだけでも素敵です。
このようなドーナツ型に編まれた鍋敷きは日本で、その地域で育った植物で編まれたものが沢山存在します。
東北の藁や沖縄のガンシナなど、使い比べも楽しそうだなと思っています。
